表現者 - Wikipedia風解説
表現者
表現者は、Keptoneの通算7枚目のオリジナルアルバムである。
概要
前作から約1年ぶりのアルバムで、2024年10月27日に開催のM3-2024秋にて頒布された。これに併せて、メロンブックスでの委託通販、および各種音楽配信サイトによるサブスクリプションも同日に解禁となった。
全曲オリジナルのインストゥルメンタルとなっている。全楽曲が2024年に完成させた楽曲であり、過去作品に散見された「同人イベント参加前に完成していた楽曲」が今作は収録されていない初めてのアルバムとなった(前作「Homemade」では「空中遊泳」、「ひだまり」、「おやすみなさい」が上記に該当する)。アルバムに先行して「The Time Of The Sage」、「道標」の2曲が公開されている。また、打ち込みのドラムスを一切使わない初のアルバムとなった。そのため、全体的にシンセポップで穏やかな作風の楽曲が並ぶ。収録曲全体を通じて、使用する楽器の基本構成を共通化することで、サウンドの統一感が図られている。
制作背景
2024年9月時点でプロットは完成していたものの、先行して公開していた楽曲以外は大半が未完成だったため、1ヶ月足らずで残りの楽曲を書き下ろした。そのようなタイトなスケジュールで完成に至ったが故に、本人曰く「今までとは別の意味で思い出深いアルバムの一つ。現時点での集大成と言ってもいいくらい」と述べている。
ジャケットのモデルはKeptone本人。写っているiPadも本人の私物である。また、撮影自体も三脚とタイマー撮影を用いたカメラによる自撮り形式となっている。「表現者」の文字もKeptone本人がペイントツールを用いて書いたものを使用している。頒布当日、M3-2024秋の会場では撮影当時と同じ衣装で出席した。
ボーナストラックとして「Dream Goes On」の別バージョン「Dream Goes On (Hopeful Version)を収録。こちらは当初、Keptoneの親族の結婚式の挙式時のBGMとして楽曲提供された。結婚式が執り行われる日時がM3-2024秋の直前だったことから、本作への収録となった。
アルバムタイトルの理由について「100曲くらい作ってきたんだけど、結局まだ作る意欲があるんで、音楽を作ることが、自分にとって何かを表現する上で大切な要素になっているのかなって思ったんです。ある意味、自分の口下手な部分を音楽で表現することで補っているようにも感じるし…。そんなことを思いながら制作していたので、自然とタイトルは"表現者"になっていったと思います」と本人は語っている。
収録曲
- とこしえの勝利
- アニス
- Dream Goes On
- The Time Of The Sage
- この先の僕ら
- か・ら・め・と・る
- 壊れぬように
- ですこ
- The Turbo
- 日なたのサイダー
- 道標
- 復活愛
- Dream Goes On (Hopeful Version)*
合計時間: 53:20
楽曲解説
1. とこしえの勝利
本作で一番最後に完成した曲。サビの後半部分にあたるメロディが最初に浮かび、そこに繋げる形で残りの部分を制作していった。1曲目が序曲形式の短い曲ではないアルバムは、4thアルバム「うたてきなもの」以来となる。曲名は、合唱曲「未来」の歌詞の一節から取られている。「どの部分を取ってもポジティブな雰囲気なので、ずっと使いたいと思っていたこのタイトルがぴったりだと思ってつけました」。
2. アニス
イントロのピアノとドラムスのハイハットによる構成は、スピッツの「リコリス」にインスピレーションを得ている。タイトルも、リコリスから連想された薬草の名前となっている。「シームレスな感じでサビに入るので一気に爽やかさというか、涼しさを感じさせる音色を入れたいと思った。景色が横方向に開けていくようなイメージで、リバーブもたっぷり使いました」。
3. Dream Goes On
別バージョンであるHopeful Versionが、Keptoneの身内の結婚式BGMとして楽曲提供された。こちらはその原曲にあたるが、時系列的には別バージョンの方が先に完成していた。これは、BGMとしての依頼が来た当時、原曲がワンコーラス分のプロットしか存在しておらず、それを元に別バージョンの制作が先に始まったためである。そのため、原曲のイントロや間奏の転調は別バージョンのアレンジを逆輸入するといった現象が起きている。こちらはスローテンポながら3分台で収まるコンパクトなアレンジとなっている。「演奏時間やアレンジでもって、このアルバムに馴染ませることを意識しました。こっちはこっちでほぼ再構成みたいなレベルで作り直しています」。
4. The Time Of The Sage
本作に先行して公開された曲。アルバム収録曲の中では一番最初に完成している。本人曰く「メロディ、コード進行、リズムが全部まとまった状態で頭に浮かんだ箇所があって、それをDAWに書き起こしたものがサビになった」とのこと。この曲をきっかけにアルバムの方向性が決まり、本作で使用する基本的な楽器構成が整うこととなった。テーマはインターネット用語の「賢者タイム」となっている。「あのちょっぴり虚しさすら感じるほどに落ち着いた、フラットな気持ちを表現するとしたら、こういうマイナー調の曲だろうなと思った」。
5. この先の僕ら
制作当時よく聴いていたスピッツの「愛のことば」に影響を受けている。夕日に黄昏ながら、過去を懐かしみつつ前を向こうとするイメージとなっている。3rdアルバム「UwU」で使用された音色(右チャンネルに配置したリズムシンセ)を久々に用いている。
6. か・ら・め・と・る
ギターのリフのようなシンセサウンドが特徴。イントロや大サビの各所で登場するメロディが最初に浮かび、プロットに残していたものの、Aメロやサビがなかなか決まらずに苦労したとのこと。タイトルは、サビのメロディの雰囲気が「何かを絡め取って離さないようなちょっとおどろおどろしい感じ」だったことによる。本作で最も演奏時間が短い。
7. 壊れぬように
前曲から一転してミドルテンポなナンバー。メインのメロディのみから始まる楽曲は、1stアルバム収録の「だいすき」以来となる。イントロのメロディから制作を開始し、そのまま時系列順に作曲していき、完成に至った。シンプルな楽器構成にすることを念頭においてアレンジが施されている。
8. ですこ
ライブで演奏されるような縦ノリ感を意識して作られた楽曲。「ですこ」という曲名は、「卓上(デスク)で作られたディスコ調の曲」から名付けられた。「リズム隊がノリノリでや展開を作っているので、それにノリ良く他のパートもついていくような感覚で制作していったと思います」。
9. The Turbo
アップテンポなナンバーで、本作で最もBPMが高い。アイディア自体は5thアルバム「ふわり」の頃にすでに存在したが、直近のアルバムの毛色と合わずお蔵入りとなっていた。イントロのアルペジオ調のシンセサイザーが特徴的だが、これはワブルベースの音色をいじって遊んでいた時に偶然生まれたものである。Keptone曰く「アルバム全体の流れとして速い曲が後半に欲しいと思って、寝かせてたこの曲を採用しました。バックトラックがかっこいいんだけどメロディを乗せるのがなかなか大変で、アルバム制作終了間際まで悩んでました。後ろ(バックトラック)に負けないシンプルでパワーのあるメロディラインを探す旅路はとても長かったですが、どうしても完成したいという一心でした。出来上がったメロディを聴いて、『これで良かった』とやっと思えましたね」。
10. 日なたのサイダー
ピアノの独奏となっている。Keptone本人の一発録りでMIDIレコーディングしたのち、細部を修正する作業をとっている。「独奏の時は衝動性に頼っているので、一定のテンポを保ったり、拍子を意識することを一旦忘れて、自分なりの抑揚でもって表現することに徹してます。ナチュラルな気まぐれさをそのまま演奏することでこのアルバムのインタールード的な役割に置けるんじゃ無いかと思っています」。
11. 道標
本作に先行して発表された楽曲の2曲目にあたる。アルバム制作終盤において、最後から2番目の曲として追加で制作された。プロット自体は2023年に存在していたが、ワンコーラスにも満たない断片的な状態であった。本作収録にあたり、残りの部分を1週間ほどで書き下ろした。「サビに当たるものが全くできていない状態から本格的な制作に入ったので、ここは思い切り壮大な感じにしようという気持ちで作りました。本当にその一心で、ひたすらコード進行を探っていたのを思い出します。そうしたら今までになかった雰囲気のアイディアがスッと出てきたので、もう藁にもすがるような気持ちで採用しました。火事場の馬鹿力を使ったような気分ですね」。
12. 復活愛
本作を締めくくる曲としてアルバム制作の終盤に作られた楽曲。珍しく、先に楽曲のタイトルを決めて制作され、「復活愛」と言うタイトルをそのまま採用している。
やってみるか…タイトルだけ決めてそこから作り始める曲ってやつを…!
— けぷとん【M3 L-18b】 (@kepton_e) September 19, 2024
このテーマは、Keptoneの交友関係の中で復活愛が実際に発生したことがきっかけとなった。「イントロのベースとドラムスから作っていった時に、1stアルバムの『妖』を思い出して、すごく懐かしい気持ちもありつつ、あの曲ぐらいシンプルなアレンジにできたらいいなと思いながら制作していきました。あの曲は自分の作風の原点でもあるので、元の形に戻っといくという意味ではテーマにも合うんじゃないかなと、今では思います。サビのメロディはオクターブの移動が多く使われていますが、これは愛がオンとオフを繰り返すということを表現していて、オフコースの『時に愛は』からインスピレーションを得ています」。
13. Dream Goes On (Hopeful Version)
ボーナストラック。Dream Goes Onの別バージョンとなっているが、先に完成したのはこちらとなっている。ボーナストラックの収録は3rdアルバム「UwU」以来となる。大サビが二回繰り返される、2番にBメロが存在する、ストリングスのアレンジなど、原曲とは大きく異なるアレンジとなっている。「式場の雰囲気と、大まかな要望を教えてもらって作りました。ちょうどDream Goes Onにあたるプロットがあって、神聖な雰囲気を感じたのできっと合うんじゃないかと思って採用しました。曲を流してもらう場所のことを考えると、かなり音色には気を配ったつもりです。なるべくアコースティック寄りにしようとして、当初はかなり緊張しいアレンジだったのですが、終盤では自分の作風に近い形で展開を作るようにしました。無事に採用してもらえてありがたいです」。
クレジット
- Keptone - Piano, Keyboards, Programming
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