【M3-2022秋】5th Album "ふわり" セルフライナーノーツ【M-01a, b /灰-012】

 どうも皆さん、けぷとんです。


今回は、2022年10月30日開催のM3-2022秋にて頒布する5作目のアルバム「ふわり」のセルフライナーノーツとなります。

あれよあれよという間に5枚目のアルバムまで辿り着きました。遂に5枚目かぁという感慨深さを感じつつ、一方で楽曲の構成に最後まで悩みながらの作業だったことによる印象の強さも感じます。


「ふわり」アルバムジャケット
アルバムジャケット

アルバムタイトルは「ふわり」。ジャケットで真っ青な空にふわっと泳ぐカモメのような軽やかな印象がこのアルバムのテーマだと思ったからです。また、音楽用語の「符割り」、各小節における音の長さの配分の意味と掛けていたりもします。これは、本作で使用する楽器にある程度統一感を持たせつつも、そのリズムパターンには曲ごとに多くのバリエーションがあることに由来します。

加えて、今作の楽曲はリバーブやエコーの残響感を多く取り入れていて、地に足をつけていない、ある意味浮き足だったような印象の曲が多いことも理由の一つです。


ではでは、各楽曲にコメントをしていきたいと思います。リードトラックとして既に公開している楽曲についてはその都度動画を埋め込んでいますので、聴きながら楽しんでいただければと思います。


1. Overture


今回の1曲目は、曲名の通り次の曲への橋渡し的な役割があります。こういう特別な意味を持った楽曲は、アルバムのような多数の楽曲が収録される時にしか組み込むことができないので、今回がいい機会だと思い、。オーケストラをメインにしたアレンジと、次曲に続くようなコード進行、およびキーの選定(同じFメジャー)、この辺りはオフコースの「over」というアルバムの「心はなれて」→「愛の中へ」の曲順から着想を得ています。そしてこの曲は、一度通しで本作を聴いた方が改めてこの曲を聴くことで、メロディに関して伏線を回収できるような構成になっています。本作をお手に取られた方は、ぜひそれも含めて何周もお楽しみいただければと思います。


2. もののあはれ



1曲目からほとんど間髪を入れずに始まるこの曲は、本作のリードトラックです。主題となるメロディが最初に浮かんで、そのまま勢いで残りの音を肉付けしていった感じです。

実は、5枚目のアルバム制作に向けて、当初はすでにあったストックの曲を組み込み、別のテーマを持った構成を考えていました。その最中にこの曲の主軸のメロディが浮かび(いわゆる「メロディが降りてきた」というやつ)、曲として形になったことでその方向性は大きく舵を切ることになりました。言わば、本作が生まれるターニングポイントのような曲ということになります。

なんとなく和のテイストで、どこか儚げな印象というところを、メロディや使用している音色から感じたこともあり、曲名も古い仮名遣いにしています。サビの1周が4の倍数ではない6小節で、ちょっと独特なローテーションになっているところが個人的にお気に入りポイントです。

また、当初はこの曲が1曲目になることを想定してアレンジを行っていた経緯から、イントロは長めになっています。最終的には2曲目になりましたが、実質トップバッターのようなポジションなので、やはりこの位置が一番ふさわしいと、改めて思っています。


3. 幻影


アルバムの構成を行う際にテンポの速い、そしてそこそこ緊張感のある曲が欲しいなと思っていたところで、この曲のプロットを掘り起こして形にしました。プロット自体は実は2年くらい前のもので、楽曲としての形を成してはいましたが、アレンジがあまりにも不十分で、かなり悩みながら出来上がった曲です。

結果として、サビのメロディを優先的に、丹念に描くようにしつつ、終始疾走感を保つアレンジになり、エンディングのところでふわっと消えていく効果を与えています。曲名もその部分を端的に表す言葉として選んでいます。

メインのシンセサイザーの主旋律とオルガンだけで始まるイントロは、個人的にとても好きな部分です。


4. Stomp Out


ミディアムテンポで独特のパワーを持つ曲になっています。ドラムスのリズムに呼応するように他の楽器パートがタイミングを合わせるアイディアから出来上がりました。Superflyの「スタンディングオベーション」などの、リズム隊と他の楽器がシンクロするセクションが含まれる曲からアイディアのヒントを得ています。

力強く繰り出されるリズムパターンがちょうど足を踏み鳴らしているような動きを連想させるので、曲のタイトルもそれに沿うようなものになりました。サビのメロディの乗せ方が、自分の昔の作風に近くて、聴きながら少々こそばゆい気持ちになりますね。でも、そういうあどけないメロディの方がこの曲には合っている気もしています。あと、間違いなく本作で一番タムを叩いてる曲です(笑)。


5. 心象


深いキックと高音域のパーカッシブな音をパズルのように組み合わせて、音と戯れながら出来上がった曲です。気軽に聴けるように楽器数を極力減らしたり、無理なコンプレッサーを使わないなど、各楽器の持つキャラクターをなるべく生かす音作りになっています。

Def Leppardの「When Does Love Go When It Dies」のようなシンプルさを主軸にしたアレンジを試みていて、2回目のAメロで主旋律と楽器一つだけになる部分はそれが強く表れています。明け方の爽やかな感じを持つ音と深いリバーブ、どこまでも広がる景色を想像できるようなサウンドメイキングは、私にとっては心象風景に近いものを感じていて、それがこの曲名の由来になっています。


6. Midnight City Lights


シティポップってどう表現するのか、それを自分なりに模索している中で生まれたのがこの曲です。ある時、Vaporwaveというジャンルの曲を聴く機会があって、その関連で昔のシティーポップと言われる楽曲にふれるタイミングがありました。そういうおしゃれなものが自分に作れるかどうか、ある種のチャレンジみたいなことを行ったプロットから膨らませて、今回収録する運びとなりました。

電子ピアノのフュージョン的要素とドラムスのミドルテンポなリズム感を大事にしながらアレンジを進めていきました。シンセパッドとしてKingKORGの生の音を使っていて、厚みの増した和音を実現できたことで楽曲の屋台骨が頼もしくなったと思います。間奏部分のソロパートは半音階を使ったり、アドリブっぽい内容になっているところが個人的にお気に入りです。


暗闇に輝くKingKORG


7. せぶんす


シンプルにダブステップをやろうというのを表現した曲です。自分が作るとすごいポジティブな印象になる不思議が発生した曲です。本作で最も古い楽曲で、最初に取り掛かったのが2014年で、2015年に一度初期バージョンとして完成していました。その後は楽曲のストックとして、2020年に頒布した3rdアルバム「UwU」の収録候補に上がっていたものの見送られ、今回改めて収録される運びとなりました。これに際して、アレンジやミックスを改めてやり直しています。本作で一番ちゃんとインストゥルメンタルしてるかもしれません。

タイトル名は、コード進行のほとんどがセブンスコード(長七度の音を含んだコード)になっていること、そしてちょうど本作の7曲目に位置するというところからつけています。英語でもよかったのですが、スペリングに"v"や"th"が入ってなかなかいかつい印象になると思ったので、平仮名にしています。


8. 夜霧


まったりとしたテンポでブレイクビーツと打ち込みサウンドを組み合わせた曲です。こちらは一度2017年に完成しており、本作にほぼそのままのアレンジで収録しています。テーマとしてはチルアウトの雰囲気を表現することを目指しています。こちらは主旋律を琴に似せたモデリングシンセを用いていて、他の曲とは少し違う趣になっています。ちなみにそのモデリングシンセの音色は、2019年に頒布した2ndアルバム「Obtain The Future」の「Mysterious World」で使用した主旋律の音に近づけています。

夜霧というタイトルは、制作途中からすでに夜(特に真夜中)のイメージがあったこと、ウエットなシンセパッドの音から、霧がかって透明感が少しぼかされているような印象を持ったところからつけています。また制作当時、仕事の関係で訪れていた長野県の伊那市にて、真夜中(午前2時ごろ)に飯田線の踏切が煌々と街灯に照らされている光景を実際に見た経験から、楽曲のイメージを膨らませていきました。


9. Arcadia


ミドルテンポで安定感のあるリズム隊とコーラスワークをイメージしたサビが特徴の曲です。これはストレートにDef Leppardの「Hysteria」のような雰囲気を意識していて、コード進行や展開は違えど、イントロから徐々に楽器数が増えていくアレンジ、シンプルな音数のドラムスなどはそれを踏襲するような構成になっています。曲名も末尾が"-ia"で終わるポジティブな単語を選び、曲順についても「Hysteria」のスタジオアルバム収録時と同じく、アルバムの最後から3番目に持ってきています。

ちなみにこれも「夜霧」とほぼ同じ時期にできた曲で、その当時とほぼ同じアレンジで本作に収録しています。シンセサイザーでギターのアルペジオに近い音の置き方というのをすごく意識した曲でもあります。時系列がややこしくなりますが、この試みが「Hopefully」(3rdアルバム「UwU」収録)や「再会」(5th EP「輪廻」収録)のギターのアルペジオパートに受け継がれていきました。


10. 覆水



「メジャーキー(Cメジャー)で明るい印象のはずなのにどこか物悲しい曲」を作りたいという強い意志のもとで出来上がった曲です。そのきっかけになったのがABBAの「Slipping Through My Fingers」という曲で、リズム隊のアレンジや、各所のコーラスワークはこの曲からヒントを得ています。サビで、持続音を担う楽器がフッと後ろに下がり、ハモりが前面に表現される1周目から、他の楽器と合わさって華やかになる2周目という流れが一番力を入れて臨んだ部分になります。

タイトルの「覆水」は、文字通り、(容器がひっくり返って)こぼれた水を指す言葉で、ことわざの「覆水盆に返らず」で見かけるかと思います。ここでは「二度とやり直せないこと、覆すことのできない行動、動作、発言、結果」などを表すメタファーとして「覆水」というタイトルにしています。こぼれた水は上から下へと重力に従って落ちていくことにスポットを当てて、規則性のあるメロディラインに沿ってサビの音階が下がっていくことでその様子を表しています。自分の脳内では、水がこぼれる様子がスローモーションで流れつつ、この曲のサビのメロディと組み合わさっているイメージです。

こういう曲は「自分や周りの人がどう頑張っても元には戻らないもの」というものを、年齢を重ねて少しずつ経験してきた今だからこそ作れたのではないかと思っています。現に、前作5th EP「輪廻」は今年初めに息を引き取ったペットに捧げることを念頭に制作しましたし、前作を頒布したそのすぐ後に自身の祖父が亡くなったりして、その辺りの出来事が、心のどこかでこの曲を作る動機になっていたのではないかと、今改めて思っています。こうして楽曲として昇華(?)できたことで、ひとつ自分の中で整理がついたのかなと、そう感じてなりません。

実は2ndアルバムでも「二度と戻れない」という曲を作っていて、こちらは生まれた瞬間から少しずつ老いへと向かう人生そのものをテーマとしています。この曲も、テーマの方向性としては似ているかもしれません。


11. Girls' Sparkles


本作を締めくくるこの曲は、EDMという強大なジャンルを自分なりに表現するためにどっしりと腰を据えて制作しました。テーマは"自分が思うkawaiiものの全て"です。結果として自分が作曲した中で過去最長の演奏時間となっています(7分22秒)。この長い演奏時間の中でたっぷりと緩急をつけながら、タイトルに沿うように明るくキラキラとしたサウンドメイキングを意識しています。この曲に関しても「夜霧」や「Arcadia」と同じ時期に一度完成しており、実は同人活動を始める前にとある楽曲投稿サイトで公開していたこともあります。しかし、そのサイト自体が閉鎖されてしまい、実質的にお蔵入りの状態となっていました。

この曲の持つ華やかなサウンドとダイナミックな展開は、個人的にもアルバムのラストこそが最もふさわしい順番であると確信していましたので、アレンジを一部改めて本作に収録しています。元々Bメロに当たる部分のメロディやコード進行だけがアイディアとしてあって、その前後をどのように膨らませていくかというところからスタートしています。制作のヒントになったのは、夭折したアーティスト、Aviciiの「Dear Boy」という曲で、制作当時はよく彼の楽曲を聴いていたのを覚えています。

実は、この曲のタイトルは、元々3rdアルバムのタイトル候補でもありました。最終的に「UwU」というタイトルが採用されたため、名前自体を使用する機会はしばらくなかったのですが、本作収録の際にこの曲なら似合うと感じ、「Girls' Sparkles」という曲名を当てることになりました。

この曲が終わり、また最初から聴き始めることで、1曲目で述べた通り、本作における先頭から最後まで一貫した流れを感じていただけると思います。


おわりに


今回は、各曲でどんなアーティストに影響を受けたかも含めて色々と語らせていただきました。これはすなわち自分がその時その時でどんな楽曲を聴いているかが反映されているので、自分の音楽の好みがうっすら垣間見える内容になっているのかなと思います。


5thアルバムのセルフライナーノーツを通して、本作をより深く味わっていただく一助になればと思っています。

そして、一曲でもハマる曲が見つかった暁には大変嬉しく思います。


日時などなど


  • M3-2022秋
  • 日時: 2022年10月30日(日)
  • 場所: 東京流通センター
  • 時間: 10:30 - 15:30
  • スペース: M-01a, b (第一展示場2階) & 灰-012 (Webイベント: M3オンライン)


リアルイベントの会場マップとサークルスペースの位置関係は以下の通りです。第一展示場2階lの入り口から左に曲がると、右手にサークル羽毛布団のスペースが見えてくるはずです。



当日はこんな感じのポスターを掲げる予定です。







サークルカット画像


M3のカタログに記載のサークルカット画像は以下の2枚が横並びの状態で掲載させていただいているかと思います(多分)。







お品書き



会場価格でアルバムは2000円、EPは500円です。シンプル!!






M3オンラインでは新譜のみの販売となりますが、リアルイベントの会場には過去に頒布したアルバムやEPも持っていきます。ジャンルは同じくMelodic Instrumentalとなっていますので、よろしければこちらもチェックしてみてください。

M3オンラインでのサークルへのリンクはこちらです(開催期間中のみ有効)


それでは、当日はリアルイベントやWebイベントなど、さまざまな場所でお手に取っていただけることを楽しみにしております。




さらに告知


会場にもWebイベントにも参加できないというそこのあなた!今回のアルバムですが、各種サブスクリプションサービスにて、イベント開催当日の2022年10月30日から配信開始となります。詳しくは、以下のURLを参照ください。


https://linkco.re/qAN9qvan




では、また。


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